会社設立は自分でできるのでしょうか?

「新会社法」が施行されて、以前よりも株式会社の設立が簡単になりました。

インターネット上でも、書籍においても会社設立の手順について詳しく解説したものも

多くあります。


また会社設立の上で重要な定款も参考になるものが官庁のホームページからダウン

ロードすることもできます。これらを利用すればご自身で設立することも可能です。

しかし、会社設立の手続きが簡易化されたとはいえ、いずれも設立の際にいくつもの

書類を作成し、それらを公証役場や法務局に提出する手間がなくなったというわけでは

ありません。また、設立には一定の要件があり、その一定の要件を充たしていなければ、苦労して作った書類の手続きを受理してもらえず再度作り直しになる可能性もあり、

費用も労力も時間も大きなロスになってしまいます。効率よく、かつ計画的に進めないと、書類修正などで思わぬ時間が取られ、当初の計画通り進まない可能性もあります。


会社設立の専門家に依頼する場合を除き、事前の準備から設立までは1か月から2か月程の余裕をもって計画的に行うことをお勧め致します。

 

将来を見据えた計画的な会社設立を!

先も申した通り、会社を設立することは以前よりも簡単になりました。

ですが、だからといって安易に会社を設立することはお勧めできません。


会社の設立と事業の成功は全くの別のものであり、会社を設立することが目標では

ありません。会社は必要だから設立するものであり、事業を成功させるための

手段でしかありません。特にこれまでに個人事業主として事業を展開していた場合は、

会社設立のタイミングを事前によく検討しておく必要があります。明確な事業計画を

立てずに会社設立をすると、せっかく作った会社の特典を活かせずに、最終的に事業をたたむことになってしまうかもしれません。


また、会社を設立しやすくなった副作用としては、他社も同様であり、その分ライバル社も増えやすくなったということでもあります。会社は設立してからどう軌道に乗るかが

勝負でもあり、他社との差をつける部分でもあります。


これまで以上に事情計画・将来性・経営戦略が重要な部分となってきますので、

設立後を見据えた計画をした上で会社設立手続きを行ってください。

 

事業目的を明確に!

会社を設立する際には、会社の業務内容(業務目的)を定めなければなりません。

個人事業主で既に何かしらの事業を行っているところや、会社設立後にすぐ事業展開をする予定の場合はもちろんのことですが、すぐに事業開始予定がなくとも将来的に

展開を考えている事業があれば、それについても掲げておくと良いでしょう。


株式会社が事業目的を変更する場合、役員会の承認を得た上で、登記内容の変更の

手続きをしなければなりません。それに準じて登記の費用も必要になります。

それ故、将来行う予定の事業も最初から掲げておけば、将来事業目的の変更を行う

必要もなくなり、時間も費用も節約できます。


しかし、むやみやたらに全く関連性のない事業目的を増やせばいいというわけではありません。予定している事業を掲げることは良いですが、事業目的が多いと、会社の事業内容が不明確になり、銀行などの金融機関に対する融資の依頼であまり良くない印象を

与えかねません。

最終的には登記申請などの手続きの上で、問題がないような表現にしておくことが

重要です。


会社法が改正され、新会社法になってから以前に比べ事業目的の包括的な記載表現が認められるようになりました。

以前ほど細やかに表現に気を使う必要はありませんが。業務目的を定める際は以下の点を満たしているかご確認ください。


・誰が見ても事業内容が明確である「明確性」

・事業内容が具体的で分かりやすい「具体性」

・営利を追求する事業の内容である「営利性」

・事業内容が法律に違反していない「適法性」

 

以上の4点にご確認ください。

 

事業目的とは

会社は外部に向けてどのような事業を行っているか示す必要があります。

その内容を誰が見ても分かるように定款に示したものを事業目的と言います。

事業目的は必ず定款に記載しなければなりません。

また法務局に登録をしなければならない登記事項でもあります。

当然のことながら、事業目的に記載されていない事業を展開してはなりません。

会社は事業目的に記載された範囲内にて、法人格を有するとされています。

それ以外は法人とは認められない

ということです。下記では実際に事業目的の記載例を紹介します。

 

事業目的の例

1 広告業・広告代理業

2 学習塾の運営

3 インターネットを利用した通信販売業

4 雑貨品の卸および販売

5 前各号に付帯する一切の業務


この目的は定款や法務局に提出する書類(登記すべき事項)に記載されます。

定款に記載された場合は下記のような表記になります。

 

事業目的と許認可の関係性

目的に記載した事業には許認可が必要なものもあります。

そもそも許認可とは一般の方には禁止されているビジネスを一定の要件を満たしているものに限り営業許可を与えるというものです。

例えば、古本屋を営む場合には「古物商許可」が必要になります。他にも身近で分かり

やすい例はレストランなどの食品を取り扱う店も許認可が必要になります。

許可なしで営業した場合罰金などの刑事罰が課されます。許認可なしで営業しては

なりません。


具体的に許認可が必要なものは「許認可が必要な事業に注意」でご説明させていただきますのでそちらをご参照ください。

許認可を取得する場合には一定の規模の事業所、設備等が必要になる事例もあるのでご注意ください。

また紹介予定派遣業を行いたいときには事業目的に「有料職業紹介」という文言が

記載されていなくては許可がおりません。


あなたの予定している事業が、以上のものに該当していないかご確認の上、記載するようご注意ください。

目的の組み合わせについて

事業目的の組み合わせにも注意しなければなりません。

上記の例でも記載した通り、紹介予定派遣業を行いたい際に、事業目的に「有料職業紹介」という文面が記載されていなければなりません。

しかし、この文言の他に「風俗営業関連」の目的が一緒に記載されていると、担当の役所からは許可が出ないこともあります。

風俗営業に関しても他の許認可が必要になる場合もあります。

以上で事業目的に伴った許認可が必要になることをご理解いただけたかと思います。

では、実際に要となる、事業目的をどのように記載していけばいいのかをご説明

致します。

事業目的の書き方

事業目的に必要な3つの要素

実際に事業目的を落とし込む際、次の3つの要素を満たしているかご確認ください。

・誰が読んでもわかるような「明確性」

・事業の目的に違法性がない「適法性」

・利潤を追及することを示す「営利性」

 

具体的な事業目的の書き方

まず、設立する会社で何を行いたいのか、また将来的に展開したい事業を紙に

書き出してください。

書き出す際に先の3点を留意しながら行ってください。目的はいくつ書き出しても

かまいません。

また、書き出した事業内容に脈絡がなくても問題ありません。

目的に書いたからといって、その事業を絶対に行わなければならないという決まりが

あるわけでもなく、事業展開してから事業目的を変更しようとすると

株式会社の場合、役員会の承認を得た上で、登記内容の変更の手続きをしなければ

なりません。

それに準じて登記の費用も必要になります。

将来的な事業として考えている場合はあらかじめ記入しておきましょう。

 

株式譲渡制限について

会社設立をする際には、株式譲渡制限を付けることをお勧めします


設立時の出資者として、自分から見て第三者が入ってくることが考えられる場合、

株主譲渡には取締役会の承認を必要とするなどの制限を設けることをお勧めします。

株主譲渡制限を付けることによって、会社と全く関係のなく自分が全く知らない人が

知らぬ間に株主になってしまうといった事態を避けるためです。

また株主譲渡制限会社の方がそうではない会社よりも規制が少なかったり、特別な

規定を設けることもできます。


ちなみに、全ての株式に譲渡制限が付いている会社は「非公開会社」といいます。

新会社法では、非公開会社のみに認められている、取締役などの任期を10年まで

延ばすことができる、株主総会の招集手続きが一週間前になる、今まで3人必要だった

取締役が1人でも可能になるなどの特権も多くあるので、小規模の会社で、

特別な理由がないのであれば全ての株式に譲渡制限を付けておくことをお勧めします。